VIPERとは?基本を理解しよう
VIPERは、iOSアプリ開発で使われるアーキテクチャパターンの一つです。アーキテクチャパターンとは、簡単に言えば「プログラムの設計図の書き方」のこと。家を建てるときに設計図が必要なように、アプリ開発でも設計の型があると、コードが整理されて管理しやすくなります。
VIPERという名前は、5つのコンポーネント(部品)の頭文字から来ています。それぞれが明確な役割を持っており、それぞれが独立して動くことで、コードの見通しが良くなり、修正やテストがしやすくなるという特徴があります。
VIPERの5つの構成要素を分かりやすく解説
1. View(ビュー):画面表示を担当
Viewは、ユーザーが実際に目にする画面部分です。ボタンやテキストフィールドなど、UIの表示と、ユーザーが画面をタップしたときの反応を担当します。
具体例
- ボタンが押されたことをPresenterに伝える
- Presenterから「このテキストを表示して」と言われたら、画面に表示する
- 計算などの複雑な処理は一切行わない
2. Interactor(インタラクター):ビジネスロジックの実行
Interactorは、アプリの「頭脳」にあたる部分です。データの取得や計算、判断など、アプリの核となる処理を行います。
具体例
- サーバーからデータを取得する
- データを計算・加工する
- 取得したデータをPresenterに渡す
- 画面のことは一切知らない(UIとは完全に独立)
3. Presenter(プレゼンター):司令塔の役割
Presenterは、ViewとInteractorの間に立つ「橋渡し役」です。Viewからの指示をInteractorに伝え、Interactorからの結果をViewが表示できる形に変換します。
具体例
- Viewから「データを取得して」と言われたら、Interactorに依頼
- Interactorから受け取ったデータを、画面表示用に整形
- 「次の画面に移動して」とRouterに指示
4. Entity(エンティティ):データの入れ物
Entityは、アプリで扱うデータの構造を定義します。ユーザー情報、商品情報など、データの「型」を決める役割です。
具体例
// ユーザー情報のEntity
struct User {
let id: Int
let name: String
let email: String
}
5. Router(ルーター):画面遷移の管理
Routerは、画面から画面への移動を管理します。「次はどの画面を表示するか」を決定し、実行する役割です。
具体例
- 詳細画面への遷移
- モーダル画面の表示
- 前の画面に戻る処理
VIPERのメリット:なぜ使うのか?
テストが書きやすい
それぞれのコンポーネントが独立しているため、部品ごとにテストができます。例えば、Interactorのビジネスロジックだけをテストしたり、Presenterの動作だけを確認したりできます。
役割分担が明確
「この処理はどこに書けばいいの?」という迷いが減ります。データ取得ならInteractor、画面表示ならView、というように、コードを書く場所がはっきりしています。
チーム開発に強い
役割が分かれているので、複数人で同時に開発しやすくなります。Aさんは画面を、Bさんはビジネスロジックを、というように分担できます。
将来の変更に強い
例えば、データの取得方法を変えたいとき、Interactorだけを修正すればOK。他の部分に影響が出にくい設計になっています。
VIPERのデメリット:注意点も知っておこう
コード量が増える
シンプルな画面でも、5つのファイルを作る必要があります。小規模なアプリでは、かえって複雑になってしまうことも。
学習コストが高い
初めて触れる人には、「なぜこんなに分ける必要があるの?」と感じられるかもしれません。慣れるまでに時間がかかります。
小規模プロジェクトには過剰
簡単な機能を実装するのに、たくさんのファイルを作るのは手間です。プロジェクトの規模に応じて、適切なパターンを選ぶことが大切です。
VIPERはこんなプロジェクトにおすすめ
- 大規模なiOSアプリ開発
- 長期運用が予定されているプロジェクト
- 複数人のチームで開発する場合
- テストを重視したい場合
- 将来的に機能追加が多く予想される場合
逆に、個人開発の小規模アプリや、プロトタイプの作成には、もっとシンプルなMVVMやMVPといったパターンの方が適しているかもしれません。
まとめ:VIPERを理解して設計力を高めよう
VIPERは、コードの責務を明確に分離することで、保守性とテスタビリティを高めるアーキテクチャパターンです。
VIPERの特徴まとめ
- View、Interactor、Presenter、Entity、Routerの5つで構成
- それぞれが独立した役割を持つ
- 大規模開発やチーム開発に適している
- テストが書きやすく、変更に強い
- 小規模プロジェクトには過剰な場合もある
プロジェクトの規模や目的に応じて、適切なアーキテクチャパターンを選択することが重要です。VIPERの考え方を理解することで、より良い設計のアプリ開発ができるようになるでしょう。